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2005年11月11日 (金)

出し入れが問題

 官能小説評論家の永田守弘さんが編集した『官能小説用語表現辞典』(マガジンハウス)という本がある。これを開くと昨今の官能ポルノ小説に用いられた特殊な表現が、山のように収録されている。
 特に多いのは女性器や女体の表現で、千件以上、全体の3分の2を占めているのには、この分野のプロであるぼくも驚かされる。つまり文章で女体を表現する仕方は、官能ポルノの場合、それだけ豊かだということだ。
 たとえば女性器そのものを表現するのに「女のアノ部分」とすませてしまう場合もあるし、「羞恥の源泉」と抽象的に描くか「濡れ羽色の恥毛に飾られた鮭肉色のビラつき」というふうに具体的に書き表わす場合もある。どういう言葉を選び、表現の仕方をとるかでそれぞれの作家の個性がきわだってくる。読者にとってはその多彩な表現が、官能ポルノを読む楽しむ要素になっている。
 こういった用語の多くは、辞書に載っていない。作家が知恵を絞って作りあげた造語が多いせいもあるが、他の分野ではめったに使われない言葉や、あからさますぎると思われる言葉は退けられてしまうのだ。誰もが耳にし口にする「おまんこ」でさえ代表的な国語辞書のほとんどが載せていない。日本語を勉強する外国人がこの言葉を辞書でひいても、理解できないわけだ。理不尽だよね。
 そういう特殊な用語のひとつに「抽送」というのがある。「ちゅうそう」と読み、男性器を女性器のなかで前後に動かす動作をいう。まあ「ピストン運動」だ。
 この「抽送」は、ぼくもよく使うのだけれど、ときどき「それは間違っていますよ」と指摘されることがある。
 ネットのなかにポルノ用語を説明したホームページがあり、その中に「『抽迭』(ちゅうてつ)という語を『抽送』と書き誤ったものが広まってしまった」と書かれているので、それを信用した人が(お節介にも)言ってくるのだ。この前は有名作家W氏が作品のなかで「抽送」を使ったら、あるブログが「Wは作家のくせに言葉を知らない」と批判して、ちょっとした騒ぎになった。
 ぼくは「本当にそうなのか」と思って調べたことがある。中国語を話すかた何人かに聞いたら、誰もが「『抽迭』なんて言葉は見たことも聞いたこともない。意味が分からない」と答えた。では「抽送」はどうかと聞くと、とたんにニヤニヤする。「抽は引き抜く、送は入れる。要するに入れたり出したりすることで、何の問題もない」。何のことはない、そのネット辞書が誤っていたのだ。
 そういうわけだから「抽送は間違いだよ」なんてせせら笑う人がいたら「それは間違いだよ」と教えてやってください。

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コメント

どの世界にも揚げ足取りをしたがる人がいて、ホント、いやんなっちゃいますね。
官能小説で使われる用語って、日常生活や一般的な文章ではほとんど使うことのない言葉が多いので、どれが正しい使い方なのか、真偽のほどがよくわからない場合も多いでしょうね。
ちなみにわたしは「抽送」という言葉を館さんの小説ではじめて知りました。

投稿: 詩織 | 2005年11月14日 (月) 00時52分

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