娼婦の黒い靴下
遅ればせながら携帯音楽プレーヤーの iPod (アイポッド)を買った。データ容量16ギガだとCDで4000曲が入るというので、古いレコードやテープのコレクションをひっくり返してiPhoneに収める作業を続けてる。
するうち、昔はよく聴いたけど最近はあまり聴かなくなった歌謡曲のコレクションのなかから、黒沢年男の『時には娼婦のように』というのが出てきた。懐かしいなあ。1978年に発表されたというから30年も前のだ。今は年雄と改名したこの人も、髪ふさふさの苦み走った二枚目青年だったね。
なかにし礼の歌詞が「脚を広げて」とか「乳房を掴み」というエロティックなものだったのが災いして、深夜以外の歌番組では放送できなかった。知らない人も多いだろうが、なかなかの名曲だ。久しぶりに何度も再生して聴き惚れてしまったよ。
自分の女に黒い靴下はいて赤い口紅つけて娼婦のようにセクシーに迫ってくれ——という歌詞なんだけど、ここでのポイントは「黒い靴下」だ。この靴下というのはパンストじゃなくて腿までの長靴下、すなわちガーターストッキングのことだ。
最近はガーターベルトやガーターストッキングもネット通販なら簡単に手に入るので、若い女性でも着けたりはいたりするようになったらしい。「男の人が好きなら、そういう格好してあげるわよ」と女性が「娼婦のように」装ってくれるのは大歓迎である。この歌、もう一度流行ってくれないか。
ところで、どうして黒い長靴下が娼婦の象徴なのだろうか。昔は女学生もはいてたし、今だって黒いドレス、たとえば喪服などの時はふつうの女性でも黒い靴下は珍しくない。
まあ黒いナイロンストッキングの場合、脚線の輪郭が強調されて美しく魅力的に見える。つまりセクシー。娼婦はそれで男たちの欲望をそそろうと考えたのだろうが、それだけとは思えない。いろいろ調べているうち自分なりに理由が分かってきた。
娼婦は何人もの客をとる。セックスのたびにストッキングを脱ぐと、またはくのが面倒だし時間がかかる。そこで下着は脱いでもストッキングだけは身に着けていた。それはそれで視覚的にエロなので男たちは興奮する。女たちは時間の節約になる。だからベッドのなかでも黒い靴下をはくのが娼婦のお約束ごとになったのだ。
脱いでしまっては、せっかくの娼婦の衣装が台無し。最後まで脱がせてはいけませんぞ。
(画像は娼婦っぽい黒ストッキングのイメージ画像です)
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