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2011年5月 6日 (金)

世紀の恋の末路

 今年のアカデミー賞は『英国王のスピーチ』が作品賞、主演男優賞、監督賞などめぼしい賞を軒並み獲得した。もう見られた人はいるだろうか。
「英国王」とは、今のエリザベス女王の父、ジョージ六世のことである。吃音症(どもり)で演説の苦手な若者が突然国王にされて、非常に悩み、なんとか障害を克服してゆくという物語。私も子供時代から同じ障害に悩んでいるから、これを機会に吃音を見直す機運が高まれば嬉しい。吃音は本人にとっては深刻な障害なんだけど、他人からは笑われるばかりで同情されることが少ないからねえ。
 そんなひどい吃りのジョージ六世が国王になったのは、先に国王になった兄、エドワード八世のせいである。本来なら王族の一員として静かに暮らせたジョージは、この兄貴がいきなりアメリカ人の人妻と恋に落ちてしまったので、なりたくない国王になるはめになってしまったからだ。
 この「兄貴の不倫相手」というのがシンプソン夫人。エドワード八世は彼女が離婚後、王妃として迎えようとしたが、国民が彼女との結婚に反対していると知ると「ブチ切れ」て「そんなら王様やめてやる!」と、勝手に退位してしまった。マスコミは「王冠を捨てた世紀の恋」なんてはやしたてたけど、まあ無責任といえば無責任だよね。
 無責任兄貴のおかげでいきなり国王にさせられた弟のジョージ六世こそいい迷惑、さんざん苦労させられるわけだ。
「だけど、恋のために王位を捨てるなんてステキじゃない!」と多くの女性は目をウルウルさせるかもしれない。
 そして「それほどの熱い恋だったら、結ばれたあとは末長く愛し合って一生を添い遂げたのでしょうね」と思いこむかもしれない。
 しかし事実はそうではなかったのだね。後世の調査では恋愛ちゅうからシンプソン夫人は別の男と二股かけていたらしい。エドワード八世が退位してめでたく結婚してからの彼女は、夫の実家(つまり英国王家)とイギリス政府が自分を適切に遇さないと不満を言いつのり、夫婦ゲンカは絶えず、ナチスドイツの操り人形になり、不倫の愛もひとつならず。ついには夫婦仲は完全に冷えきり、別居状態で晩年を暮らした。
 王冠を捨てさせるほどの情熱的な恋も、醒めてしまえば単なるわがままカップル。周囲に大きな迷惑をかけただけというのが「世紀の恋」の真実なんである。
『英国王のスピーチ』は、そういうダメ兄貴とダメ兄嫁のことを考えながら見てほしいものだ。

(画像は結婚痕のウィンザー公とシンプソン夫人)

Photo

館淳一の『いろ艶筆』は休載ちゅうですが、この記事は震災前に書かれていた最後のもので、九州スポーツのみに掲載されたものです。

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