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2014年11月 8日 (土)

SMは汚らわしいか

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(イラストレーション by 中村成二)

「口にするのも汚らわしい所」と国会で発言したのは、民主党の菊田真紀子衆院議員だった。もちろん、宮沢洋一経済産業大臣の会計報告書に広島のSMバーで飲食したという記録が見つかった「事件」の、そのお店についてのことである。 「税金でSMバーに行った」と報道されたこともあるが、税金ではないようだ。しかし政治家の活動に使う公費であることに違いはない。それを性的な愉しみ、しかも「変態的なことをする性風俗の店で使ったのは許せない」という非難の嵐は、報道されてからはごうごうと吹きまくっている。  厳密にいえばSMバーはSMクラブのような性風俗店ではない。時おり軽いSMプレイが行われるが、基本はふつうの飲食店だ。もちろん何の違法性もない。  まあ、そういうお店で政治的な話をするわけがないのだから、そんな店の領収書を提出した事務所は何を考えていたんだろうか。ぼくのようにSMを趣味として愉しんでいる人間にとっては、えらい迷惑なことをしてくれたもんだと、文句を言いたくなる。  八月にこの欄で、アメリカの浮気暴露番組『チーターズ』のことに触れてぼくはこう書いた。「大勢の人たちが嘲笑する時、その陰でひっそりと「切ないなあ」と悲しく呟く人がいるのだ。バラエティ番組を作る連中は、妻や夫に言えない嗜癖を秘めている人をいくらでも笑い者にしてもいいと思っているのだろうか。ぼくは全然笑えないよ」と。今回はS「バラエティ番組」を「マスコミ」と入れ替えれば、そっくり同じ気持だ。SMを趣味としている人たちはみな同じような思いを抱いている。「銀座の高級クラブや一流料亭で何十万円と使うのはよくて、SMバーで4万円使うのはよくないのか」と怒るマニアもいる。「見るのも汚らわしい人間」として差別されるわけだからね、そりゃ嘆き、怒るのも当然だ。   しかし、SMを非難し笑いものにする人間は、それほど高潔でご清潔な心情の持ち主なんだろうか。SMの業界にいれば、政治家や財界人のなかにSMを趣味としている人間は少なくないと誰でも知っている。いや、社会全体に、ごくふつうにいるのだ。非難し笑いものにしている人間のなかにはSMよりもっと人に言えない、知られたくない趣味の持ち主だっているに違いない。  公費を使ったのはまずかったが、SMバーに罪はない。ううむ、明るく笑いとばしたかったが、難しいね、こういう問題は。

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コメント

SMバーは汚らしいか。
この手の話は前にも言ったバイアスの問題でもあります。違法性がないっていうならSMクラブも同じです。バーもクラブも無許可なら違法ですが。
SMバーもハプニングバーもフィティッシュバーもその店によって結構変わってくるでしょう。
館さんのいうような普通のバーもあればショーパブ系とか、
プレイに参加できる店もあったりで、宮沢大臣の入った店がどのようなとこだったのか。
これ、SMっていうよりも問題にしてるのは性的な匂いがするからでしょう。
それが非難の原因になってる。
人間っていうのはバイアス、自己の経験と思い込みで生きている。
マスコミも真紀子衆院議員も館さん自身もみな自己のバイアスを批判せずにしゃべっている。
そして上の話は「一般原則を特殊化する際の誤謬」といいます。

投稿: まりさ | 2014年11月23日 (日) 07時46分

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