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2015年2月25日 (水)

「NТR」は乱婚制の名残り?

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(イラストレーション by 中村成二)
 最近、「NТR」という略語をあちこちで目にする。ぼくがメシの種にしているエロの分野での話。「私の趣味はNТRです」などと用いられる。
 もともとは「寝取られ」という言葉をローマ字で省略したもので、自分の妻や恋人が他の男とセックスするのを容認する男のこと、あるいはその行為を言う。最近の若い人向け小説やコミックの中では「NТR萌え」などとして、一つのジャンルを形成している。
 一夫一婦制の世の中で「不倫」とか「浮気」が悪いことだと思い疑わない人から見れば、わざと妻や恋人を浮気させ、それを喜ぶ男がいるなんて信じられないかもしれないが、これが実は多いんだねえ。NТRなんて言われるまでもなく、大昔から男たちは「寝取っ」たり「寝取られ」たりして楽しんできた。だから「一盗二婢」なんて言葉も出来た(セックスのなかで一番楽しいのは人の妻を寝取ること、という意味)
「そりゃ、寝取る側は楽しいだろうが、寝取られる側は悔しいだけじゃないか」と思うのは間違っている。自分の妻や恋人が他の男に抱かれる、いろいろされる——と考えただけで興奮する男はいっぱいいる。
 そういうNТR趣味を満足させるためのグループや、実行の場を提供する店舗はいたるところにある。ぼくもエロ作家という職業柄、取材でいろいろな場を訪ね、いろいろなNТR趣味の人に会ってきたけれど、みんなごくふつうの、どちらかといえば教養があり、社会的地位の高い人たちが多い。たいていは男性がパートナーを連れてきて、彼女を他の男たちが誘惑するのにまかせ、目の前でセックスさせるのである。
「そんなことをしていたら二人の関係が崩れてしまうのでは」と思うだろうが、案外そうでもないのだ。というのは、それで興奮した男が、今度は熱烈にパートナーとセックスするからだ。
 もちろん自分の女が他の男に抱かれるのだから嫉妬やいろんな感情が渦巻くだろうけれど、それが刺激となって性欲が高まる。取材してみると、みんな「死ぬまで一夫一婦なんて、なんとつまらないことだろうか」と思うようになるようだ。
 それというのも、人間=ヒトは、そもそもは乱婚制で、女たちはいろんな男とセックスして優秀な遺伝子をもつ男の種を受胎しようと励んでいた時代が長くあったせいなんだろうね。今もなおNТRに励む一群の男女がいるということは、太古の昔から続く乱婚制の名残りということなのだろうか。

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2015年2月24日 (火)

女のよがり声には意味がある

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(イラストレーション by 中村成二)
「霊長類のなかで性交時に声を出すメスは、チンパンジーとボノボ、そして人間だけである」という記事を目にして、驚いてしまったね(ボノボは高い知能を持つことで知られる、チンパンジーに似た種。アフリカのコンゴ共和国だけに棲息).
 セックスの時、女性がよがり声をあげるのは、ごくふつうのことだ。まあ「あはーん」という慎ましやかな喘ぎ型から「ぎゃああ、イクイク!」という絶叫型まで、その程度はさまざまだけれども、声を発しない女性のほうが珍しい。
 どうして人間。チンパンジー、ボノボの三種だけがよがり声をあげるのだろうか。それを研究したのがクリストファー・ライアンとカシェルダ・ジェタという二人の動物心理学者たちだった。
 その研究成果は『性の進化論—女性のオルガスムは、なぜ霊長類にだけ発達したか』(作品社)にまとめられている。その書から、女性のよがり声(性交発声という)についての部分だけ、要約してみよう。
 ライアン博士らは。チンパンジーやボノボの生態を研究し、どちらのメスも複数のオスを相手にセックスしていることに着目した。つまり彼らは乱婚制なのだ。
 乱婚というのは、メスがいろいろなオスの精子を競争させ、最終的に最良の遺伝子をもつオスの子を妊娠したいという、メスの側の戦略によるものだ。そのため、チンパンジーもボノボも、妊娠可能な時期はずっと性器が腫れあがり、オスを惹きつける。
 実は人間のメス、つまり女性も、発情期間はきわめて長く、いつでもセックスOKという状態にある。ということは、かつては人間も乱婚制の時代があったということだ。農業が発達し人間が土地に縛られるようになってから、一夫一婦制になり、妻の浮気が許されなくなるのだが、それ以前の原始的な群れのなかでは、女たちは自由に男たちを誘い、セックスしていたに違いない。
 その時、女がよがり声をあげれば、他の男たちはそれを聴いて「おれもこの女とやりたい」と集ってくる。つまりよがり声とは、多くの男たちを誘惑する手段として備わった。
 今夜もいたるところで女たちが「いいわ、いいわ!」「ああイクイク!」などと叫んでいるのは、その昔、自由に男たちと交わることが出来た時代から女の体のなかに流れる、誘惑の遺伝子のなせる業なのである。どんな男でも、女のよがり声を聞けばそそられる。それは当然のことなのだ。

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2015年2月 8日 (日)

永井荷風とシュミーズ

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(イラストレーション by 中村成二)

 先日、この欄で『シュミーズとスリップ問題』というのを書いた。女性の下着であるスリップとシュミーズについて、区別がつかないオジサンが多いので、二つはまったく別のモノだと説明した。
 形は似たようなものだが、スリップは上着やスカートがまとわりつかないよう、「滑らせる」ための絹やナイロンの下着で、体にフィットするよう裁断・縫製がされている。シュミーズは木綿や麻の素材で、滑らせる役割は無く、もっぱら保温のための下着。スリップと違って体をゆるやかに覆う。スリップの登場によってシュミーズは死語となり、そのスリップが今、死語となっている。
 そう丁寧に説明したのだが、自分でも「どうしてシュミーズという言葉が残ってるのかな」と不思議でならなかった。しかし、あるオジサンが「だってシミチョロと言うじゃないか。あれはシュミーズだろ」という言葉でハッと気がついた。
 スカートの裾からシュミーズの裾がハミ出して見えるのがシミチョロ。当然、スリップに切り替わった段階で「スリチョロ」にならなければいけなかったのだが、そのまま使い続けられてしまった。それがオジサンたちの頭にいつまでもシュミーズという言葉を生きのびさせた原因(の一つ)だったのだ。
 まあ一番の原因は「男には女の下着はよく分からん」ということなんだろうね。テディとかビスチェとかキャミソールとか、ランジェリーの種類はいっぱいあるから、男性にとっては化粧品同様、分らないことだらけである。それはいつの世も同じで、明治から昭和まで、女とのエロなことばっかり書いて「文豪」と呼ばれた大作家、永井荷風もそうだった。
 明治の生まれだから女性はみんな和装。着物については下着のことまで熟知していた荷風だったが、やがて洋装が一般的になると困ってしまった。女の洋装下着をどう描写したものかサッパリ分らない。
 困った荷風が頼ったのは、親しくしていた永井智子というオペラ歌手であった(肉体関係はなかった。作家・永井路子さんの実母である)。荷風は一日、永井智子の自宅を訪ねて教えを請うた。美人オペラ歌手は自分の洋装下着を広げて「これがシュミーズ、これがズロース、これがブラジャー……」といちいち手にとらせて教えた。これは後に彼女自信が肩っている。「ほう、これがシュミーズですか」と、なまめかしい下着を触ってはメモをとっていた荷風の姿を想像するとおかしい。

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エロの隠し場所

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(イラストレーション by 中村成二)
 今のところに住んでから四十年近くたつ。引っ越しすると身の回りのいらないものは処分されてゆくものだけれど、居続けると溜まるばかり。ハッと気がつくと不要なモノで囲まれている。今年はそういうのを整理してスッキリと暮らそう——と決意した。
 しかしこれが難しい。本一冊でも「これは捨てよう」と思ってパラパラめくってみると、結構おもしろい。「じゃあヒマな時に読みかえそう」と思い、本棚に戻してしまう。そんなことばっかりで、いくら時間をかけても減らない。
 本はまあ最後は古書店に売るなりゴミとして出せば片づくが、面倒なのがエロに関係したモノだ。ぼくはSM官能作家が肩書きだから、そういう仕事のために集めた資料やら活動の記録などが山となってある。なかでも雑誌や新聞の切り抜きなどスクラップが困る。
 ただ捨てても、回収される前に誰かが見つけたら「うわーなんだ、これ、エゲつない。誰が捨てたんだ、こんなもの」と詮索されたらたまらない。記録類(写真のネガとか紙焼きとか)のなかには他人の秘められたプライバシーが写されているのが多い。何かの拍子に誰かが拾って「こんなの見つけたよ」とネットでアップされたら迷惑をかけてしまう。かといって都会の真ん中では燃やす場所もない。ぼくと同様にエロんなものを集めてる人は。どうやって処分しているんだろう。困ってる人が多いのではないかな。
 ——と思いつつちょっとネットにアクセスしてみたら、みうらじゅん氏が自分のエロ世界を語っている動画があったので、何気なく見てしまった。
 みうら氏はエロな写真や記事をスクラップする趣味があり、400冊もスクラップがあって増殖ちゅうなのだそうだ。「うーん、これは処分する時どうするんだろう?」と、つい聞いてみたくなったよ。
 氏がエロな切り抜きをコレクションし始めたのは小学生の頃で、当時はスクラップしないで、応接間に親が飾っていた文学全集の一冊を箱から取りだし、本は捨てて箱のなかに切り抜きを隠していたそうだ(まあぼくもやったことがある)
 結局は、親がハタキをかけた時に音が違うというので見つかり、焼き捨てられてしまう。それがショックだったそうだが、分かるなあ、その気持。ぼくも子供時代からエロなモノをどこに隠すかずいぶん考えたけど、やっぱり見つかってしまった。「ここに隠せば絶対安全」という成功例があったら教えてほしい。

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