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2016年11月12日 (土)

精子との戦い

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(イラストレーション by 中村成二)
「完全な避妊とは、セックスをしないことだ」と言われる。それぐらい避妊は難しい。100パーセント信頼できる避妊法というのがまだ見つかっていないからだ。
 避妊が難しいのは、精液と供に放出される精子が、ものすごく小さく、活発に運動するからなのだね。少しの隙間があったり、油断があったりすると、スルリスルリとドジョウのように子宮から卵管へと移動してゆく。行為のあと、コンドームが破れているのに気づいて驚いた男子も多いだろう。一度、膣のなかに放出された精子は、それこそ水を得た魚のように元気に卵子をめざす。しかも一度の射精で放出される精子は一億以上、多い男子で五億もある。これをコンドームやペッサリーなどで防ぎきれないところに避妊法の難しさがある。
 この動き回る精子をやっつけようというのが殺精子剤という薬品。いろんなものが製造されているけれど、問題は女性のデリケートな膣に対し、アレルギー症状を起こすなどの副作用があること。そしてやっぱり全滅させるのが難しい。
 こうなると精子と避妊学者たちの戦いになってくるのだが、新たな精子撃退法が発見されたらしい。英国のウルヴァーハンプトン大学の研究者たちが、精子を一時的に麻痺させて、動かなくしてしまう物質を発明したのである。
 精子はオタマジャクシに例えられるように、丸い頭部に長いシッポがついている。このシッポを鞭毛(べんもう)というのだけれど、そのエネルギー源は特殊なタンパク質だという。研究者たちは、そのタンパク質を機能しないようにする、特殊なペプチド化合物を合成することにしたというのだ。
 これを男性が点鼻スプレーや錠剤の形で吸収すると、男性の精巣に溜められている精子の鞭毛が動かなくなり、放出されても泳げないので子宮へたどり着くことが出来ない。例えてみれば、プールに飛び込む前の水泳選手の手足を動けなくしてしまう薬のようなものかな。これじゃ本当に精子も手も足も出ない。モロ出しされても、膣からそのまま排出されてしまう。
 この薬は摂取後数時間で効きはじめ、数日間で効果は消えるという。これが安全と分かれば、2021年には製品が売られるようになるという。まあ精子を殺すわけじゃないから、男にとっては殺精子剤より気分的に罪悪感は少ないけれど、一度に何億も放出される精子が、ちょっとかわいそうな気が……。

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